研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

Ever17感想と考察(ネタバレあり)

すべてのエンディングをみたので、それぞれ攻略した順にコメントしていこうかと。

トゥルールートをクリアしたのを前提に書いていくので、少しでもEver17に興味がある方はまずこのページを消して、まずゲームをプレイしてください(本気)

ネタバレなしのレビューも書いたので、参考にしていただければ。

一応何回か改行してから書きます。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

次元、視点、メタ
ブリックヴィンケル(B.W)は無論4次元世界の住人イコールプレイヤーである僕達のことを指しています。
ココたちがいるのは3次元世界。(ゲームだから二次元というわけではないことに注意)
優春(35)がココ編でいっていたのはつまりこういうことです。
 
平面α上に3点ABCがある。そして平面αとは別の場所に点Dがある。ここで、3点ABCが点Dを知覚できるようにする(取り込む)にはどうすればよいか?
 
答えは、3点ABCを一直線上に並べること。そうすれば、4点ABCDは平面β上に同時に存在することができる。つまり、三次元空間にあった点Dを二次元平面に取り込むことに成功したわけだ。
 
第三視点発現計画はそれを一つ高次元化したものということ。三次元空間に4点ABCDがある。それとは別のどこか(この場合恐らくxyzとは別の、時間を表すt軸が変動する)に点Eが存在する。立体ABCDが点Eを取り込むにはどうすればよいか?
 
点Dを3点ABCで構成される平面上に移動させる。そうすると、4点ABCDで構成される平面と点Eを結んで、三次元の立体を創造することができる。
 
ここでいう点Eというのがブリックヴィンケルイコール第三視点すなわちプレイヤーである僕達であり、4点ABCDというのがLeMUでの事故であり、点Dを移動するトリックが武ー少年視点の視差である。
 
いま視差といったけど、これは優春がLeMUで少年に話した話とリンクしているのではないかと思っています。
 
人は片目だけだと物を立体的に見えない。そこには二次元的な平面情報しか得られない。両目の視差を利用してやっと、人は立体「的」に物を見ることができる。
 
それで優編ではサインペンのキャップを嵌めるシーンになるわけですが……つまり両目というのが、武ー少年視点のことを指しているのでないでしょうか。片方の視点だけではただ三次元の世界を知覚するだけだけど、両方の視点をプレイすることで少し4次元「的」な理解をすることができる。でもそれだけでは足りない。第三視点であるプレイヤーの力を借りることで、Ever17というゲームは、初めて四次元世界を縦横無尽に移動することができる。
 
……混乱してきました。
 
 
八百比丘尼

Ever17では作品世界を象徴するようなお話が幾つか挿入されています。ココの八百比丘尼の話。これは不老不死になる薬を飲んだ女性が、800年間ぐらい生きつづけるみたいな話でした。今ググって確かめました。

 

言うまでもなくつぐみのことを指していると思います。でもそれだけでしょうか? 作品中では、最終的に、キュレイウィルスのキャリアはつぐみだけではありません。もしかしたら、優春や武やカブラキやココのことを言っているのかもしれませんよね。そして空も、キュレイとは関係ありませんが、AIという設定ゆえに不老不死の存在と言えるかもしれません。それぞれのキャラについて八百比丘尼との比較考察をするのは面倒なのでやめます。要は800年間ではなく17年間待ち続けた、ってことです。

 

全員生存という一応のハッピーエンドを迎えたEver17ですが、彼らは不老不死で、絶対に八百比丘尼みたいな厳しい現実が待っているはずなんですよね……そのへんの描かれていない未来も暗示しているのだとしたら、すこし怖くなります。

 

トゥルールート後にネットで文献(感想ブログ)を読みあさっていたら、「キュレイとティーフブラウで相殺とかになるのかと思っていた」という意見を目にし、それだったら綺麗に収まったかもなあとか思いました。

 

 

空の存在論

哲学用語で存在論というのがあるらしいんですが、それとは(多分)違います。

 

要は多世界解釈の説明をしていて、「あなた(倉成)は今、ここにしか存在していないわけではない。ここではない無数の世界にもう一人のあなたが、それぞれ存在している。そのどれもがあなたである。あなたは遍在している」と言っています。

 

また、空がホログラムで分身して、平行世界の存在を擬似的に表現してもいました。

 

この内容はともかく、空ルートという非正史(つまり、トゥルールートはつぐみルートを基本的に継承したストーリーになっているということ)において平行世界の話をしているのは象徴的だなあと。

 

僕はプレイしている途中で、「このゲームは4つの平行世界がLeMU内部でぐちゃぐちゃに干渉しあって云々」的な推理を展開していたのですが、それはまったくの間違いだったわけです。

 

その意味で、正解ではない=正史ではないという符号の一致が、妙に悲しかったりするのです。

 

 

メタ美少女ゲームとして

『ゲーム的リアリズムの誕生』では、Ever17を次のように解説していました。

 
「一方で、シナリオの視差トリックに気づけなかったプレイヤーはやはり現実の存在なのであり、ゲームの世界に没入することはできても実際に入ることはできはしない。ということをプレイヤーに自覚させている。他方ででココがブリックヴィンケルすなわち僕達に語りかけるシーンでは、プレイヤーはゲーム物語の内側に立たされている。この2重の手続きを踏むEver17はメタ美少女ゲームの完成形だ。」
 

誤読だったら申し訳ないです。僕もまさにそれだと思います。本でも引用されてましたが、ココがプレイヤーに語りかけるシーンではいい意味で鳥肌が立ちました。ああ、ゲームの中の女の子が僕に……という感慨とともに、自分がゲームに介入することによってストーリーを完成させたという感動で涙が出てきました。

 

「それゲームなんだから当たり前だろ」と言われるかもしれません。なんででしょうね? それはそうなんですけど、僕は感動しました。

 
僕がEver17で一番評価したいのはそういうところです。つまり、少年ー武視点の視差トリックは、単にプレーヤーをどっきりさせるための演出ではなく、シナリオの要請によってそのように構成された、ということです。
 
しかもシナリオの要請と書きましたが、本当はブリックヴィンケルすなわち僕の要請によるものなんですよね。そこも本当に驚きました。この辺の解説はもっとしたいんですけど長くなるのでカット。
 
 
 でまあ、考察といえばこのぐらいです。あとは闇鬼の真相とか、生体反応:1の謎とか(これプレイ中に一番気になってたのに明かされなかった……)、ブリックヴィンケルの発現における鶏卵問題とか、まあしかしそこらへんは考察しても答えがでなさそうだし、そうでなくても大した知見が得られなさそうなので省こうと思います。
 
ていうかこのゲーム、すごすぎて、いちいち言語化しようとするのも躊躇われるというか……ボキャ貧なのでしっくりくる言葉を探すのが難しいんですよね。
 
こないだ気持ちがあまりにも高ぶってしまい、アマゾンマーケットプレイスでEver17のビジュアルファンブックとサントラを購入しました。あとはそれをじっくり鑑賞しつつ、ツイッターでこのゲームを地味に宣伝していこうとか思っています。
 

関連記事

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 2017年の5月1日(ゲームの舞台となる日)に書いた思い出。プレイから3年ぐらい経ち、この作品の優れている点をよりちゃんと適切に言語化できていると思う(それでもまだ言葉足らずだが)。

 

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クリア直後に書いた雑感。この感動を伝えたいが、ネタバレしてしまったらその瞬間に、同じ体験を共有する機会を永遠に失ってしまう……という葛藤を抱えながら書いていた。

 

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クリア直後、 それぞれのルートについて書きなぐった文章。ライブ感がある。興奮して書いたのを覚えている。

 

Ever17 -the out of infinity-(限定版) Premium Edition - PSP

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  • 発売日: 2009/03/12
  • メディア: Video Game