研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

経済学ってなんの役に立つの?と言われ

結構前のことなのですが、僕が経済学部に入学するという話をした時に、一つ上の先輩に「経済学ってなんの役に立つの?経営とかの方が役に立つと思うんだが」と言われ、少しショックでした。僕は何も返せず怪訝な顔をするだけでした。

今になって考えてみると、その問いに対する答えは以下のようになります。

「ご存知の通り経済学は1776年アダムスミス『国富論』に端を発しています。彼はその中で神の見えざる手っていうのを唱えていて、市場には一切介入せず全て任せておけばオーケーだと主張していました。
けれども世界恐慌が起きてそんなに市場に任せてもられないなと。そこでカールマルクス共産主義革命を起こそうとして失敗し、他方ジョンメナードケインズは政府の財政出動によって裁量的に有効需要を増やすべしと言って一定の成功を収めたと。
その後バブル崩壊後の日本経済にも見られる流動性の罠などもあり、フリードマンに代表されるケインズ経済学に対して懐疑的なマネタリストも出現したと。そして現在はスティグリッツが情報の非対称性とか言って新たな経済学のステージを作っていると。
アダムスミスからここまで200年以上、経済学はいろいろあった訳です。それはもちろん経済学が社会に貢献しているということを端的に示しているし、加えて僕は200年もの間人々が経済学を欲望してきたというその事実に注目したいのです。5年や10年ではなく、これだけの長期にわたって経済学は人類に欲望されていた。これはすごいことで、僕の考えではつまりこういうことになります。経済学は人類にとって普遍的な価値の対象である。したがってまだ20歳ぐらいの人が経済学の意義を問うのはいささか焦燥ではないかと」

しかし先輩が要求していた答えはこうではないとも僕は思うんですね。先輩は心理学を専攻しており、加えて英語学習にも意欲的な人なのですが、彼はつまり心理学や英語が人とのコミュニケーションにおいて有用であるのに対し経済学は個人が学んだところであまり有用ではない、その上でお前はなぜ経済学を選んだのかと質問したのだと思います。

けれどもこれは本質的には大した問いでないです。先輩は心理学を巧みに操ることで他者との円滑なコミュニケーションを欲望し、僕は経済学を欲望した。ただそれだけのことです。