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研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

初夜行バス

9月8日月曜日午後10時ごろ、新宿高速バスターミナル。少し雨が降っていた。人がけっこうおおい。夜のヨドバシカメラ前は人通りが少なく、駅舎の中だけが活発だった。

 

バスは10分刻みで次々に発車するから、乗車誘導の係の人は慌ただしかった。綺麗な女子大生と思われる二人組がおり、この人と一緒のバスにならないかなあなどと期待する。結局彼女たちは長野行きのバスに乗っていった。長野行きバスは、乗車する際にジュースを貰えるようだ。かぼすミックスか何かだったと思う。遠目にしか分からなかったけど。

 

ついに自分の乗るバスが来て、乗った。スマホ乗車券を使う人はあまりにも少ない。階段を登ってまずはじめに思ったのが、臭いだ。うんこみたいな臭いがする。ていうかうんこの臭いだ。憶測だが、後方のトイレの臭いが漏れているのではないか。臭いに慣れるまではだいぶ辛かった。

 

座席はかなりスカスカで、俺は一人で二人分のシートを占有した。というか殆どの客が一人で二人分座っていた。これはマジで良かった。知らないおじさんと臨席になってしまうのだけは嫌だと思いながらここまで来ていた。

 

運転手さんが出発前にブランケットを配ってくれた。ブランケットがあるかどうかは賭けだったので(今思えばHPとかに書いてあったんじゃないだろうか)寒さ対策にパーカーをリュックに詰め込んでいたのだが、完全に無意味となった。

 

バスが発進する。斜め前に座っている人がビールを飲み始めた。くそう俺も買っておけばと後悔する。けれどものちトイレに行きたくなってしまうことを鑑みれば買わなくてよかったかもしれない。

 

聖蹟桜ヶ丘、調布を経て社内消灯となった。運転席と座席の間をカーテンが仕切る。暗い。二人体制の運転手さんの一方が仮眠に入る(多分交代で仮眠をとっているんだと思う。多分)。これは安心なのだが、通常はワンマン運転みたいなことをほのめかすアナウンスもあり、少々怯えた。

 

カーテンを開けると光が社内に入り、他のお客の迷惑になりかねない。したがって夜景鑑賞は我慢することにしたのだが、一つ前の席のジジイはカーテンをそっと開き、景色を眺めながら酒を飲むのであった。眩しくて寝られねー。アイマスクなんてなくても大丈夫だろ、と高をくくっていた。

 

寝られないのは眩しさだけが原因じゃない。リクライニングシートを倒しても、むろんベッドのような寝心地は提供されない。あと臭い。加えて高速道路に突入してからはバスがガタガタ揺れ、怖かった。事故が起きたらどうしよう、と本気で恐怖していた。これは本当にそうで、恐らく眠れない一番の原因は恐怖だったと思う。いや、単に眠れなくて恐怖が募ったのかもしれない。鶏卵問題である。

 

いずれにせよ不安の渦の中、QOLの著しく低いバスであった。以後夜行バスには二度と乗らないことを決心する。途中サービスエリア休憩が3回あったのだが、俺は3回目で降りた。なんていうサービスエリアかは分からない。見てなかった。ただ時刻は4時半ごろだった。だからおそらく名古屋まで近い。外の空気は冷たく透き通っていて、口から肺まですうっと心地よく流れてくる感じがした。深夜のサービスエリアのトイレは一抹の寂しさを覚えた。広いトイレに人は全くおらず、交通事故防止を訴える音声と明るい照明だけが人工的な生を刻みつけていた。人類が今日滅びてもこのトイレはその役割を全うし続けるのだろう。

 

バスに戻る途中すごい光景を見た。駐車場に巨大トラックが20台ぐらい並んで停めてあるのである。そして一番端に我々のバスがちょこんと。これは衝撃的だった。これだけの数の大型トラックが、深夜に全国を駆け巡っているのだ。むろん全国を駆け巡っているのはここに停まっているのの何十倍もあるだろう。しかし数字上は20程度とはいえ、そのデカさに身体的に圧倒された。ドライバーのみなさんお疲れさまです、と心の底から思った。

 

バスに帰ってからは1時間半ぐらいで到着だ。その間もなかなか眠れなかった。そわそわしていた。運転手さんのアナウンスがあり、スマホ乗車券を用意。無言で見せたらあっさり通された。バスを降りるとそこはよくわからない建造物の内部だった。何処に行けばいいのかよく分からん。とりあえずトイレのマークが近くにあったのでそこで用を足し、名鉄名古屋駅脱出を試みた。

 

                                  続かない