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研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

クロスチャンネルと美少女ゲームの構造みたいなもの

 CROSS†CHANNELPSP版をプレイしました。

 

BEST HIT セレクション CROSS†CHANNEL ~To all people~

BEST HIT セレクション CROSS†CHANNEL ~To all people~

 

 

 ループものの作品として高い評価を受けている美少女ゲームです。本来は18禁アダルトゲームなのですが、PSP移植版なのでエロシーンは削除されています。スカートめくりをしてもなぜかパンツが見えないのも、移植に際しての変更点らしいですね。別にパンツが見えても全年齢向け規定侵犯にはならないと思うんですが……

 とにかく一定の角度以上に布が上がらない「鋼鉄のスカート」なる物がPSP版には導入されました。コミック力場ならぬC†C力場みたいなものですかね。スカートを捲っても見えない。でも最近はアニメで「反重力スカート」っていうのもありますよね。しゃがみ込んでいる女の子を足元から映しても、なぜかスカートが身体に張り付いていてパンツが隠されている! ……という。

 

 さて僕のクロスチャンネルの感想としては、これは美少女ゲームへの皮肉なのかなあという感じです。作中で太一が自分のことを「メタ」と自称しているところがあったかと思うんですが、クロスチャンネルもメタ美少女ゲームっぽいところがあると思います。

 まず主役8名以外の人類が消滅したという設定に注目します。これはけっこう特異な世界観です。が、実はこの設定は最初の1周目を終了し、2周めに突入する時の太一のモノローグで初めて明かされます。つまり1周目、みみ先輩がアンテナを完成させ「黒須†チャンネル」の放送を平穏に終える周回のなかでは、すでに人類は消滅しているにもかかわらずそのことは明示されず、プレイヤーはその隠蔽に気付かないまま2週目に入るわけです。

 人類が滅亡していることに気付かない。というよりもむしろ、人類が滅亡しているという世界に違和感を持たない。クロスチャンネルはそのような奇妙な体験をプレイヤーに強いています。これは僕は美少女ゲームが持つ構造を揶揄している手法だと思います。どういうことでしょうか。

 美少女ゲームがどのような画面で構成されているか想像してみてください。背景絵がある。キャラクターの立ち絵がある。下4分の1ぐらいが文字情報で占められている。文字情報が記述するのは、基本的には台詞とキャラクターの行動描写・心理描写です。周りの景色を描写することはめったにありません。なぜか。

 絵があるからです。小説では例えば海に行ったら「波が泡立ちながら押したり引いたりしている。生き物のようなリズムを感じた」みたいな描写を入れるものです。しかし美少女ゲームでは絵のみ(あるいはそれに「ざざーん……ざざーん」みたいなSEなどを加え)でゴリ押ししてくるわけです。あとは女の子に「海だー! キャッホーイ」とか言わせておけばプレイヤーは「あ、海なんだな」って分かっちゃいますよね。それゆえ美少女ゲームでは周りの景色や風景を詳細に記述する必要がないんです。

 そしてもちろん、まわりにいる人々がどのようにしているかなんていうのも書く必要がない。つまり、美少女ゲームというメディアで語られる物語は、最初から主要キャラクター以外の人類が滅亡しているようなものなんですよね。これは小説やドラマなどではありえないことです。

 その異様さ、奇妙さ、不気味さをクロスチャンネルは露悪的に示していると僕は思います。「人類は滅亡してるんだよ、バーカ。1週目で気付かなかったの?」みたいな。ゲーム的世界観をスタンダードなものとして受容してしまっているプレイヤー対して、この人類滅亡設定は有効な皮肉になり得ています。

 

 そして精神異常者、と言っていいのか分かりませんが、「適応係数低値者」たちの収容施設でもある群青学院という設定もなんだか皮肉っぽいと思いました。トラウマ少女やうまく人と親しくなれない少女たちを包摂する主人公=俺の構図を示すことで「安全に痛いパフォーマンス」になっている……

 まあこれは僕はそんなに本質的な指摘でもないと思いますが。ちょっと断片的に考えたって程度です。

 

 そしてなによりクロスチャンネルで提示されているのは美少女ゲームを巡るループの問題でしょうね。

 ご存知の通り美少女ゲームは様々な女の子を主人公が複数の人生を繰り返して攻略するゲームであり、そのプレイスタイルそのものがループの構造と一致しているんですから、その構造をストーリーの中に組み込んでしまうクロスチャンネルがたいへんに批評的な作品であるということはわざわざ僕が言わなくてもいいと思う、っていうか作中で太一自身が「ループしてみんなを救う」的なことを言っているんですよね。

 

 僕としてはクロスチャンネル美少女ゲーム批判の美少女ゲーム、メタ美少女ゲームとして評価すべき作品だと思いました。泣きゲーってほどでもないし。まあ七香が母親だったってところはよかったですね。

 ちなみに僕は七香が一番好きです。攻略対象でもないのに。べつにマザコンとかじゃなくて、2週目辺りから「七香いいなあ」って思ったんですよ。時空の超越者感とかがいいじゃないですか。

 

 ところでこの話、最後は太一が永遠のループ? のなかでラジオを放送し続けていくという終わりになっていますが、これってまどマギとかなり似ていますね。東さんが「まどマギ賛美は無教養」と批判していたのもよく分かる気がします。2003年にこれプレイしてまどマギみたら、完全にパクリだと思いますよね……

「いやアニメでループを語ったのは先駆的だ」って言うかもしれませんがそれはビューティフル・ドリーマーという先行作品があるし、なによりさっき書いたようにループの問題を美少女ゲーム形式でやったことって大事なポイントだと思うんですよ。