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研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

雨の新宿御苑

 朝起きてのっそりと布団を振り払うと、窓の外で雨の音がした。ガラス戸を引いて確認する。眼鏡をかけていなかったからよく分からなかった。けれども下を見ると道を多角形の黄色い傘が動いていた。雨だ。僕は何となく、突発的に新宿御苑に行こうと思った。そして行った。

 券売機が以前行った時とは違いタッチパネル式になっていて、改札もチケットのバーコードを読み取るタイプに変わっていた。扉が開くときの電子的な音がたちまち雨の音にかき消される。以前の三本の鉄棒が飛び出たような扉の軋むような音を思い出す。

 森が雨を受け止め、ひどくざわついている。ゆらゆらと揺れる葉とその影は周囲を一段と鬱蒼とさせていた。木の頂点は見上げても見えないぐらいに高く、そんな木々に囲まれている自分の矮小さに不安になる。

 砂利道を通り、森を抜けた。普段は気付かないけれど舗装された道は結構凹凸があり、大小の水溜りがいくつもできていた。庭園の静けさのなかに、僕の足音と水音が溶け込む。

 誰もいない東屋で煙草を吸う。雨の日にこんなところに誰もこない。湿気の所為かいつもより濃く見える煙を見ると、何やってんだろう俺と思わずにはいられない。座ったまま仰け反って後ろを向く。重みのある雨粒が草木を叩いている。さらに後ろに立っている木は染井吉野と書かれたプレートを下げていた。吸ってもいない煙草の灰が落ちる。

 思いのほか何もない。雨のここには何もなかった。人もいないし、来ない。池にかかった橋を渡りながら僕は想像する。小学生が遠足でここに来ることになった。しかし雨のため、遠足は延期になる。小学生は楽しみにしていた遠足を諦めきれず、単独でここに来た……その小学生の感じる虚無感、徒労感のようなものを自分は感じている。そう思った。