研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

初めての地下アイドル「現場」体験(5月22日秋葉原)

 結論から言うと結構楽しかったです。

 

 何がきっかけかは忘れたけど、最近篠崎こころさんという地下アイドルのツイッターをフォローしました。

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 最上もがさんに近い雰囲気があっていいですよね。

 自分のお気に入り欄を見ると、5月9日にふぁぼったツイートがあるので少なくともそれ以前に知ったのでしょう。それから篠崎さんについてはネットで画像を調べたりツイッターに上げられている自撮りを見たりして「可愛いのお」とか思っていました。逆に言えばその程度の関心しかありませんでした。

 で、先日篠崎さんがこのようなツイートをしていました。

 じつはちょっと前、ゲンロンカフェで濱野智史さんがアイドルについて語ってる回を見てから、地下アイドルのライブ(「現場」と呼ばれているらしい)に行きたいと思っていたんですね。いい機会だから行こうと思い、本当に行ってしまいました。地下アイドルのライブに誘って付いてきてくれる友達なんてむろんいないので、一人で。

 

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 大学から徒歩10分ていど。秋葉原に来るのは久しぶりだったのでまずはヨドバシの上の有隣堂に行く。特に面白いものは見られず。相変わらず変なアクセサリーとかバッグとかの売り場が本棚に隣接していて意味不明だった。

 

 グーグルマップを駆使してなんとか会場に到着。僕は篠崎さんの所属する「プティパ」というアイドルグループの出番を狙って時間を調整していた。だからとっくに開演していたし、出入口に人がいたりするわけでもなかった。

 勇気を出して入ると、一人の女性が高校の机と椅子みたいなのを構えていた。入場無料・出入り自由という情報を得ていたので、僕は女性に「ウス」みたいな会釈をして奥の扉(おそらく会場)に向かおうとした。そうしたら「ドリンク代お願いします」と足止めを食らった。「あっはい」と完全挙動不審体勢で財布を取り出す。てかドリンク代ていくらだ? そう思いながら小銭入れをジャラジャラしていたら「500円です」と教えてくれた。

 100円玉5枚を支払うと、「お目当ては?」。そんなこと聞かれるなんて想定してなかったので軽く同様した。素直に「プティパの篠崎こころです」と答えればよかったのになんだか気恥ずかしく、「アッ、えー、決めてないス」とお茶を濁した。ふつうにキモかった。ドリンクチケットを貰い、手の甲に再入場時に見せるスタンプを押される。なるほどこういう感じで入るのね。

 

 中は蒸し暑いのかなと思ったがそんなでもなく、意外と涼しかった。前の方は暑そうだったけど。すでにステージは盛況で、プティパが歌い踊っていた。しまった、少し遅かった。後ろの方に音響だかなんだかをするためのカウンター的なものがあり、とりあえずそこに寄りかかって遠くからオタクたちとアイドルを眺めることに。

 手拍子だのコールだのでオタクたちはアイドル以上に体力を消耗して動いていたような気がした。「ケチャ」「ミックス」などの噂には聞いていたけど生で見たことはなかったドルオタ的営みを観察することができたのはわりと面白かった。

 そんなオタクたちの隙間からちょびっとだけ篠崎さんの姿が見えていた。生で見るとすごい。遠目にだけどめちゃめちゃ可愛いのが分かった。グレーのパーカーのフードを被り、曲(後で知ったがBiSというアイドルグループのnerveという曲だった)のサビで腕をぶんぶん振って歌ってる姿はもはや天使だった。

 また、サビの合間にアイドルがステージ前方に身を乗り出す時間が数秒ほどあるのだが、分散していたオタ達が急激にアイドルのいる方に詰め寄り「接触」を試みる姿はちょっとしたスペクタクルだった。「接触」に失敗するも目を合わせてもらえた(「レス」をもらえた)ことでにわかに活気づくオタなどもおり、こういうのも情報でしか知らなかった「現場」の現実なのだなあと思った。

 

 曲が終わり、MCが始まる。自己紹介で篠崎さんが「金髪ー!」と叫び、オタが「クソ野郎ー!」と叫んでいた。オタはもちろん、篠崎さんも楽しそうに見えた。これが地下アイドルの醍醐味なのだろう、オタにとってもアイドルにとっても。

 それから今日は本来3人のプティパが2人でライブをやってることを伝え、新譜発売の告知をして次の曲へ。対バンライブだからあまり余裕がなさそうだった。

 次の曲もまあ感想は同様。ただ思ったのは、篠崎さんの歌が上手いということ。伸びるというか、まっすぐな歌声だと思った。ぶっちゃけアイドルの歌唱力はそんなに高いと思ってなかった(失礼)のだが、篠崎さんの歌は聞いていて心地よく、もっと聞きたいと思った。あと歌がけっこう良い。オリジナルなのかどうかはわからないけど。

 

 とまあそんな具合でライブを眺めていて、「PPPH」や「ロマンス」をしているオタや、サイリウムを3本指に挟むオタなどを見てある種の感激を覚えた。図鑑でしか見たことのなかった絶滅したはずの恐竜をジュラシックパークで見た時の子供みたいな。

   それと同時に僕は何か複雑な感情が胸に渦巻いているのを感じていた。それはすぐに分かった。僕もあの中に、熱狂するオタ達の中に入り、共に「現場」を盛り上げたいという欲求である。祭りは見るだけでは楽しめない。参加というのは一緒に叫んで動いて初めて達成されるものなのだ。そういう一種の衝動が僕の中にあるということを確認した。けれども初めてのライブでそんなことをする勇気も出ず、ずっと後ろのほうで腕を組み勉強していた(「地蔵」と呼ばれるらしい)。

 ただ、ずっと「ああいう風に大声出して叫びたいなあ」とは思っていた。なるほどアイドルは現場じゃないと楽しめないだろうなと納得がいった。ライブに費やしたくなる気持ちも分かる。自分ー周囲のオターアイドルとの三位一体感。閉ざされた地下での連帯感。そういうものを感じるかもしれない。

 

 プティパのライブが終わる。会場を後にするオタもちらほらいた。外で休憩して再入場するのか、目当てが終わったから帰るのか……分からない。

 僕も篠崎さんの出番が終わったので帰ろうかと一瞬思ったが、今回の僕の目的はどちらかというと地下アイドルの現場とはどういうものなのかを勉強するといういささか取材めいた方向性だったので残ることにした。

 次の5人組のアイドルグループも盛り上がった。面白かったのは、とある一人のオタがプティパの時にめっちゃ張り切ってミックス打ってたのに急に地蔵になったことだった。推しがいないのだろうか、やけに静かにしてるなあと思ったら、2曲目からなんか妙にかっこよさげなオタ芸を誰も見てない片隅で無言でやっていた。こんな感じの。

 

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 まあそんな感じでライブが終了。あ、「僕は後ろでただ眺めていた」と書きましたが、一応拍手とか手拍子はしてましたよ。それはともかく、会場を後にする時、ある太ったオタが友人らしき人に言っていた言葉に僕は感銘を受けました。

「今日もアイドルを喜ばせるためにがんばったよ」

 これが地下アイドルオタが地下アイドルオタたる所以なのだと素朴に思いましたね。まじかよキモって思われるかもしれません。以前の僕もそう思っていたでしょう。

 しかし実際に現場に行き、アイドルとオタの間のある種の相互コミュニケーションを見ると、あながち馬鹿にできない台詞だと思うのです。目の前で一生懸命、息を切らせながら熱唱しているアイドルのためなら、コールもするしオタ芸もしたくなるのです(僕はしませんでしたが)。それをとても強く、この現場は僕に教えてくれました。

 外でドリンクチケットと引き換えにコーラを貰い、外に出ました。外ではオタ達が数個のグループに分かれてライブの感想を言い合っていました。僕はそういう仲間もいないので一人で帰ることにしました。

 

 今ちょうどお金がなくて、定期の効く御茶ノ水まで歩いて戻ることに。途中、神田明神に寄って行きました。初めて来たのが夜というのはなかなか珍しいものです。思ったよりこぢんまりとした神社でしたが、ライトアップされたおみくじ結び所(なんて呼べばいいのか分からない)、社の横から見える背景の高層ビル……異色な取り合わせがなぜか美しく見えてしまう、そんな不思議な感想を抱きました。ラブライブの聖地(?)ということもあり、痛絵馬が散見されました。

 そんな神田明神で、ああ篠崎さんめちゃめちゃかわいかったなあと数分の熱狂に思いを馳せつつ、秋葉原を去ったのでした。地下アイドルの現場も知ることができたし、たいへんよい体験になりました。

 

 しかし話はこれで終わらない。(つづく)