研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

紫色のお姉さんについて

こんばんわ。

 

「『本の感想を2日に1回ぐらいのペースで書きます』と言ってから5日が経ちました。それがこのザマです」と言ってから12日が経ちました。それがこのザマです。

しばらく本をゆっくり読むことはしばらくできません。それができるようになるのは、おそらく試験が終わった2月頃になるでしょう。今はちょっとバタバタしており(この「バタバタしてて」っていう言い方、社会人っぽいですね)、なかなかまとまった時間をとることが難しいんです。

この1週間、何をして過ごしてきたんだかよく分かりません。いろいろやったような気もするし、やってないような気もする。でも時間は確実に過ぎていく。手応えのない日々が続いています。

飲み会とかもあったんですが、持ち前のコミュ障ゆえにまったく楽しめず、さらに財布の金も尽き(マジでいま3円しかないんです。金がないっていうのは今月キツいとかそういう軽いニュアンスではなく、文字通り物体としての貨幣が存在していないんです)、昼飯も家で食パンとかを食い続けています。

今月、もう3回ぐらい親に金を無心しています。コミケ前にもう一度頭を下げることになるでしょう。なにせ3円しかないのですから。カタログ? か、金が……でも思い出の品として買っときたいですね……

 

で、最近何に忙しいかというと、じつはライターのバイトをしてまして、その日程が詰まっているんですね。ライターといってもこないだのDeNAのメディアみたいなのではなく、ちゃんと取材して書くタイプのやつです。なので当たり前ですが、取材する時間も必要なわけです。で、そのときの録音を文字起こししたりするんですね。そうなると、書く時間だけじゃなく、移動とか打ち合わせとかの時間も必要になってくるわけです。

あんまり詳しい仕事の内容はいえないんですが、いま僕は3件の仕事をもらってまして、それらが一挙に押し寄せているんです。

ちょっと具体的に言いますと、実はその3つのうち2つは12月にやることが8月の段階から決まってまして、(卒論も忙しいだろうけど頑張ろう)と、夏休みの時の僕は思っていたんです。で、残りの一つの仕事は8月から10月ぐらいのうちに取材&執筆が終わる予定だったんですよ。ところが先方の事情で原稿がストップされまして。それでどうしたんだろうなーとか思っていたのですが、12月に入ってその担当者から「構成を練り直したので執筆の再開をお願いします」と連絡があったんです。しかしこちらは2件の仕事と卒論をやっているわけですよ。ここでさらにもうひとつ原稿を引き受けるのはきわめて危険なわけです。けれどもここで断るわけにもいかず、「遅れるかもしれませんががんばります」とメールを返信しました。でもきっと迷惑をかけることになる。だって卒論を無視する訳にはいかないし。ていうかそっちが原稿をペンディングにしたのが悪いんじゃん……!

と、いうことでなんかもやもやが溜まっているんです。あと自動車免許の本試験も受けてねえし。そういうもやもやがあるせいで、小説とかも読む気にならないんですね。あといま僕は週2でスーパーのバイトに行ってるんですが、それもかなりむかつくわけです。この忙しいのにそんなくだらない仕事をしている場合じゃないんだぞと。そんなことに時間を使ってられないんだよ!

 

で、さっきも僕はそのバイトに行っていたわけです。

僕は長いことこのバイトをしているので、けっこう常さんは認知しているんですが、常連さんにもいくつかランクがあって、「かなり見かける人」「まあまあ来る人」「たまに来る人」とかに分けられるわけです。で、今日はその「たまに来る人」が来たんですね。あ、久しぶりに見たなと。

その人のことを僕は「紫色のお姉さん」と命名していまして、それはなぜかというと、いつも買い物の時に「ピアニッシモ・プレシア・ディアス・メンソール」を買っていくからですね。画像を検索してもらえればわかりますが、それは紫色っぽいカラーリングの煙草なんです。

いつもそのお姉さんは買い物かごをレジにおいて、「あと、棚の左上にある……そうそう、その右の……それ」と言っていました。普通、煙草には番号が振ってあって、それを言えば店員はすぐ取れるのですが、その紫色の煙草には番号が振ってないんですね。

そういうときは「ピアニッシモ・プレシア・ディアス・メンソール」と言ってくれれば僕はすぐ取るんですが、なぜかお姉さんは「ピアニッシモ・プレシア・ディアス・メンソール」とは言いませんでした。長ったらしい正式名称を言うのが気恥ずかしいのか、それともそんな長い名前で読んでも店員(僕)が混乱するだけだろうという配慮なのか……

いずれにせよ、毎回毎回、そのお姉さんは「あと、棚の左上にある……そうそう、その右の……それ」と言って、僕はピアニッシモ・プレシア・ディアス・メンソールを取っていました。僕はいつしか、そのお姉さんが来ると(あ、ピアニッシモ・プレシア・ディアス・メンソールを買うな)と心の準備をし、「あと、」と言われたらすぐにピアニッシモ・プレシア・ディアス・メンソールを取るようにしました。

そのお姉さんはすこし関西なまりで、「ありがとう」を京都弁みたいに言うのです。標準語だと「ありがとう」は「り」にアクセントを置くと思いますが、お姉さんは「と」ににアクセントを置くんですね。キャバ嬢のような見た目に反してなんともはんなり、優雅な喋り方をするわけです。だから初めてそのお姉さんがピアニッシモ・プレシア・ディアス・メンソールを買っていったその日から、とても印象に残っていました。まあ、もちろんお姉さんがものすごく綺麗だったからというのもありますが……(ちなみにそのお姉さんは後藤真希に似ています)。

そのお姉さんはこれまで、たぶん5回ぐらいしか来ていません。それでもすごくよく覚えています。「ありがとう」と言われるたびに、心地よいイントネーションだなあと思っていました。

で、今日。久しぶりに紫色のお姉さんが来ました。あ、紫色のお姉さんだ、と思いました。レジにカゴを置きます。「あと、」。来たな。「55番」。あれ。

煙草の棚を見ると、ピアニッシモ・プレシア・ディアス・メンソールのところに「55」と書かれていました。僕も気づいていなかったのですが、ピアニッシモ・プレシア・ディアス・メンソールにはいつのまにか番号が与えられていたのです。そんなに人気の銘柄ではないので、まったく気づきませんでした。

僕はピアニッシモ・プレシア・ディアス・メンソールを取り、ピッとスキャンして、ヨーグルトやお茶と一緒に袋に詰めました。後ろのお客さんの列が詰まっていたので僕はいささか急かし気味で、お姉さんは「ありがとう」を言わずに去っていきました。

僕は来年の2月ぐらいにバイトを辞めます。たぶん、紫色のお姉さんとエンカウントすることは、これまでの統計的確率からいって、もうないでしょう。

 

※2017年1月8日追記

来店しました。でもその時僕は隣のレジで売上金を回収していました。お姉さんはピアニッシモ・プレシア・ディアス・メンソールを2つ買っていきました。「ありがとう」は言っていませんでした。