研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

カンボジア・ニューヨーク一人旅2日目

3月12日

起きると周りには誰もいなかった。ものすごく天井が高く、広い空港に一人で寝ている。歩く歩道も停止している。飛行機の発着陸を告げる電子掲示板だけが活動している。そんな空間。朝5時。日本との時差は1時間。iPhoneは日本時刻を表示し、iPadは現地時刻を表示している。

とりあえず人のいそうなところに移動して喫煙室で煙草を吸い、トイレで顔を洗い(歯を磨きたかったが歯ブラシを持ってきてなかった)、iPadでユーチューブでラップ動画を見る。R指定の過去の対戦動画。そこで気になったビートがあり、曲名をコメントから調べて、iTunesで購入。New York Shit.まさに俺がこれから行くところじゃねえか……。

とか思いながら曲を聞き、ASUSのパソコンでGmailをチェックしたり、スマホを充電したりして、フードコートへ。人でいっぱいだ! なるほど。中華フードの店もたくさんあった。でもあんまりうまそうじゃないからやめとこうかな、でもせっかく中国来たしな、でも高いしな、ということでコンビニ的なものを探したのだが、どこを見てもおみやげのお菓子的なものしか売ってない。なぜや。結局マックでチーズバーガーとアイスコーヒーを買った。日本と違ってクレジット払いができる。そうしたらなぜかハッシュドポテトが付いてきた。頼んでない。まあでもいいか。食う。普通にうまい。

そしてゲートへ。500番以降のゲートは一旦バスに乗って離れたターミナルに行く必要がある。そのなかで欧米人がかっぱ巻きを食っていた。割り箸で。なんでもありか。こちらのターミナルもゲートが10個ぐらいあるため、ちゃんとフードコートもお土産屋もスタバもあった。そうか、早めにこちらに来ておけばよかったかもしれない。

そして搭乗。多国籍乗員。特にカンボジア人みたいなのが多いということもない(いま思えば、外国に旅行に行くカンボジア人っているのか? そんな金ある奴いるんか?)。俺の隣にはだれもいなかったが、一つ飛んで通路側に白人のおっさんがいた。キャセイドラゴン航空。前にディスプレイがない。えー。カンボジアまでは2,3時間ぐらい。席も3かける2の二列構造で、国内線みたい。だからか? でも機内食は出た。『虎よ、虎よ!』の続きを読む気にならず、寝ていたら、おっさんが起こしてくれた。でも俺はマック食ったばかりでまったく腹も減ってなかったので、ノー、ノー、っていって断った。

そんでカンボジアに着く。窓から見る限り、なんもない異国である。人の住んでいない場所が広がっているように見える。降りる。やはり暑い。コートは脱いでいるけど、それでも。ターミナルまでバスにのるのだが、そのバスの中も暑い。

3分ほどでターミナル着。税関に並ぶ。パスポートを渡す。何も喋らずに通過。そんなんで大丈夫か? そして預入れ荷物を受け取るわけだが……いつまでたっても流れてこねえ。手際が悪い。Wi-Fiルータを起動するも、通信状況が悪いらしく接続できない。空港のWi-Fiに接続しようとするも、登録が必要とのこと。めんどくさい。でも時間があるのでやる。そんでだらだらしてたらやっと荷物が流れてくる。

外へ出る。暑い。そして、ここはまぎれもなく東南アジアだ、と思った。プラカードをもったアジア人がいっぱいいる。とりあえず横の方のベンチに座り、Wi-Fiの接続を試みる。……つながらない。どういうことだふざけんな! 再起動するもだめ。そうこうしているうちに周りによくわからない細かな虫がいることに気づき、虫除けスプレーを噴射する。ホテルまでトゥクトゥクに乗りたいのだが、どうすればいいか。ググりたいのだがググれん。

どうしようとぼーっとしていると、トゥクトゥクに乗る観光客をいくつか発見。頑張れば行けるか、と思い空港内の車道の横断歩道を渡ると、警備員らしき人に「タクシー? トゥクトゥク?」と聞かれる。「トゥクトゥク」と答えると、案内所に誘導される。トゥクトゥクは6ドルと書いてあった。なるほど。固定相場制なのか。と思い、支払う。チケットを貰い、乗り場に案内される。トゥクトゥクドライバーにホテルの行き先を伝える。

「何日いるの?」「3日」「短い! プランは決まってるの?」「いや」って行ったところ、ドライバーがカンボジアの観光マップを取り出し、何やら説明してきた。そしたら、ホテルまで行って、2日目にアンコールワットまで連れて行ってアンコールトムにも連れて行って、3日目に空港まで行って、それで60ドルだという。60ドル!? 約6600円って。日本のタクシーと変わらねえじゃねえか……いやそれよりは安いか。でもカンボジアの適正価格とは思えん。「ハア!?」みたいなリアクションをして、「ノー、ノー」といった。そんで「アンコールワットからアンコールトムまでは歩くから安くしろ」、「いや歩けないよめっちゃ遠いよ」、「いや俺は歩ける、いやいや歩いてる人なんていないよ」、「いや俺は行く」っていったら、「じゃあいくらならいい?」って言われ、「40ドル」って言ったら、「ええ!?」みたいな顔をされ、「オーケー、じゃあ45ドル!」って言われたのだが、「じゃあいいよとりあえず今日はホテルまで行け。俺は6ドルすでに支払った。アンコールワットとかはもういい」って言ったら、うーん分かった40ドルでいいよということで合意を得た。ドライバーはリリーといった。25歳らしい。

トゥクトゥクに乗り空港を出る。その瞬間、カンボジアという国がどんな国なのかを理解した。砂。大地が乾いている。高い建物がない。空港の目の前だぞ? そこにはもうすでに貧困の風景が広がっている。大通りに出ると車やバイクやトゥクトゥクがたくさん走っている。歩いている人はほとんどいない。というか、歩道というものがない。信号はあるが、横断歩道はない。そこらへんで洗濯物を干したりしている人がいる。うん、テレビで見た東南アジアの貧困だ……と素直に思った。

中心部っぽいところに行くとサムスンの携帯を扱っている店などがあるのだが、それでも貧困国感は否めない。看板のタイ文字、新大久保でたまに見かけるあの感じだ。そしてこの匂い! 東南アジア人に特有のあの匂い。俺は好きではないが、これを嗅ぐと本当に東南アジアに来たのだなという感じがする。そこでホテルに着く。「明日は朝5時にホテルの前ね」と言われ、朝早! と思う。

とりあえずホテルにチェックイン。Wi-Fiに接続。一安心。まずシャワーを浴びる。水は不衛生な気がするため、口に入れないように注意しながら身体を洗う。バルコニーでタバコを吸って外へ。ほんとに終わってるところだ……道はガタガタだし、建物はところどころぶっ壊れてるし、行き交う車両は無法にすれ違っている。つまり、車線というものが存在せず、その場その場の判断でハンドルを切っている。自転車か。そんなだから、歩行者が車道を横切って反対側に行くのも一苦労だ。タイミングを図って渡るしか無いのだが、交通量が多い。まして大通りにもなると、なかなかチャンスはない。ほとんど危険な横断になる。

そんななか、グーグルマップを便りに文明化されたスーパーへ入る。香港にいる時に地図をダウンロードしておこうと思ったのだが、なぜかこのエリアはダウンロードできませんというメッセージが出現し、実行できなかったのだ。スーパーでスタバのコーヒーを買い、繁華街の方へ。

途中、良さげな飯屋でミーゴレンを注文。ミーゴレンはインドネシア料理である。しかし気にしてはいけない。飲み物はいらないと言ったら、氷の入ったジョッキを渡され、お茶の入ったやかんを指さされた。なるほど。お茶は煮沸されているから問題ないだろう。ということで飲んだのだが、途中で、あれ、この氷はなんの水でつくってるんだろう? ということに気がついてしまう。そこでお茶を飲むのをやめる。ところで箸が水の入ったコップに入れられて出てきたのはなんなのだ? 二郎か。水に入れてほしくないのだが。でもやむを得ないので食った。味は……まあまあだった。

そしてパブストリートへ。歩道がないので歩きづらい。サングラスを掛けた白人とすれ違ったりすると、ああ、俺はとんでもなくやばいところに来たわけじゃないんだな、という安心感を得ることができた。道の途中ではトゥクトゥクドライバーに何度も客引きされたが普通に無視。「勉強シマスヨ!」というドライバーもいた。今時日本人でも「勉強」なんて言わんぞ。途中、HISのビルを発見したが機能しているんだかしていないんだか分からない。

よくわからんまま外国人の多そうなパブに入り、ビールを注文。一杯0.5ドル。安すぎ。近くの席には日本人の若者集団がいて喋っていた。ぼーっとしてビールを飲み、煙草を吸いたくなったので灰皿を貰い、ビールをおかわりして会計。2杯飲んだので1ドルかと思ったらなぜかよく分からんけどもうちょっとすると言われ、2ドル渡したら、カンボジアの通貨であるリエルが大量に返ってきた。なぜドルとリエル以外の2つの通貨が流通しているのか……これが観光地化した後進国のリアルである。アニメ『C』のラスト。

そんで帰りにケンタッキーでハンバーガーとポテトとコーラのセットを買って帰る。クレジットカードは使えなかった。ふざけんな。ホテルでユーチューブを見ながらだらだらする。このへんでナタリアなっちゃんを知る。なっちゃんにはこの旅の間なんども助けられた。

寝て、起きたら夕方。よし行くか、ということで同じ道を通ってナイトマーケットへ。風俗らしき女が抱きついてくる。「えへへ……」と思いつつ無視する。そういえば旅立つ前日に『バンコクナイツ』を観たことを思い出した。そこらへんを歩き回って観光。東南アジア特有の匂いがむんむんする。くだらないアクセサリーや服を売る露天がそこらじゅうにある。何も買わない。日本の男子大学生の集団なども発見。無視。

とにかく飯を食おうということでパブストリートの方へ。昼間とはだいぶ雰囲気が違う。まず人が多い。次にネオンがすごい。多分ネオンではないが、とにかく看板が派手に光っている。カオサンロードほどではないが、カオサンロードのような雰囲気がある。昼に飲んだパブもある。

が、そこはスルーし、どこかよさげな店を探す。the red piano という店に入る。アンジェリーナ・ジョリーが映画の撮影で入った店だという。そこでなんとかっていうビール(アンコールビールじゃない、カンボジアっぽいやつ)と、なんかよくわかんないけど米と肉のやつを頼む。テラス席なので道行く人々の様子をよく見ることができる。食事を済ませた観光客をハイエナのように待ち受ける風俗の客引きみたいな男が目を光らせていたりした。

しばらくして料理がくる。普通先にビール出すやろ、と思っていたが、料理が来ても来ないとは……どういうことだと思い店員に聞いたら忘れていたみたいだった。ふざけんな。すぐにビールが来た。……アンコールビールが。ふざるな。でももういいよ。腹減ったし。ということで飯を食う。まあ、おいしくはない。肉はぱさついてるし、米は炊きムラがある。

それを食った後、もう一杯飲もうと思い、最初に注文したなんとかビールを再度注文。瓶のまま出され、だらだらしながら飲む。アンコールビールよりは苦味があるけどホップ感はまったくなく、おいしくない。そしてチェック。なんと、なんとかビールを2本注文したことになっていた。ただちに抗議。ちゃんとした値段にしてもらう。ここでもカードは使えないとのことだった。意味が分からん。ドルで支払い、お釣りをリエルでもらう。

店を出て、昼間には行かなかったところまで歩いていってみた。この繁華街はどこまで広がっているのだろう? シェムリアップ川にかかっている橋はイルミネーションで光り輝いていた。その向かいにはハードロックカフェ、日本人向けの焼肉屋、中国人向けの何かなどがあった。しかしこの辺も道路は自動車が走り回っているが横断歩道などは何もなく。タイミングを伺ってじっとしているとトゥクトゥクに話しかけられるので、それがうざかった。中心街のあたりはどこもかしこも光り輝いていた(比喩ではなく)ので、写真を撮りまくった。

ふたたびパブストリートの方に行くと、重低音をブワブワ鳴らしているクラブがあり、その近くでビデオを撮影してみたりした。そうして暗い中を歩いて帰った。ホテル周辺は全然灯りなどなく、そもそも街灯などがなく、それが治安の低さをイメージさせる。まあなんともなかったが……しかし歩道が整備されていないのもなあ。

シャワーを浴びようかとも思ったがまあ明日の朝浴びればいいか、ということでそのまま寝ることに。夜は比較的涼しくて汗をかかなかった。それにホテルは冷房が効いているので、ユーチューブを見ているうちに旅の疲労もあって心地よい眠気にいざなわれていったのだった。