研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

一人暮らし始めました

五反田で初の一人暮らしをはじめて2週間が経過した。部屋の様子は引っ越した日からあまり変わっていない。家具を買う金がないからだ。12月と1月に豪遊しすぎて、ボーナスの半分ぐらいを消費してしまったのだ。そしてそのつけが2月、3月のカードの請求にのしかかってくる。だから家具もあんまり買えないのだ。増えたものといえば、アマゾンで買ったゴミ箱と、ビールの空き缶と、孤独感ぐらいか。

この街は飯屋が多くて会社の帰り道にはたくさんの誘惑が道の両脇に構えているのだが、金がないのでそういうところには入れない。おにやんまといううどん屋は比較的安いので、週末はそこで遅い朝食を食べたりする。おにやんまは引っ越したその日にはじめて食べた。これまで五反田に来たことは何度かあったが、いつも長蛇の列が形成されていて、食べることができなかった。列に並ぶのは嫌いなのだ。しかし午前中であれば並ぶことなく入ることができた。胡椒の効いた鶏天がたいそううまく、さらにそのうまみがつゆに溶け込んで尋常ではないコクを生み出すのだ。身体の内側から染み渡ってくる暖かさ。

せっかく一人暮らしをはじめたのだから自炊をしようと思い、調理器と調味料を買い込み、麻婆豆腐とカレーを作った。麻婆豆腐は一晩で2人前を平らげたが、カレーは4人前分ぐらい作ってしまったので、余った分は冷蔵庫に保管した。これがいま頭を悩ませている。どういうことか。
まず家の冷蔵庫は狭い。自分で買ったのではなく、最初から部屋に備え付けられている冷蔵庫を使っている。これがすごく小さくて、ものを全然置けない。カレーを2つの皿に分けて冷蔵庫に入れるともうほとんどものを入れるスペースがない。
次に皿はこの2枚しかないという問題がある。カレーを冷蔵保存するために所持している皿の全てを使ってしまった。いやもう一枚ぐらい皿買えよ、という話なのだが、今のところ料理したものは移し替えずにフライパンのまま食べるようにしている。
最後に、せっかく作ったカレーを食べることができないという問題がある。カレーは先週の月曜日に作ったのだが、翌日の夜、左奥歯の付近に特大の口内炎ができていることを発見した。朝はなんともなかった(ような気がする)のだが、3連休明けの仕事で苛烈な精神的ストレスに圧殺され、その帰結として口内炎を生じた(のだと思う)。ビタミン不足もあったのだとは思う。毎日キャベツをちぎってドレッシングをかけて食べていたのだが……それでもだめということは、やはりストレスなのだろう。そんなこんなで僕はチョコラbb プラスをオーバードーズし、カレーは再加熱されることなく冷蔵庫の中で匂いを放ち続けている。カレーを冷蔵庫に入れて以降、朝飯と晩飯はコンビニで済ませがちになっている。たまにパスタ。今日はうどんを茹でた。いずれにせよ口内炎のせいで美味しくご飯が食べられない。でもようやく今日になって治癒の気配を感じはじめた。

今日は朝、アマゾンの配達の音で目が覚める。ついでにゆうパックなども一緒に引き渡された。ゆうパック、火曜日から金曜日まで4日連続で不在票がドアの郵便受けに入っていた。火曜日に帰宅すると不在票に気づき、日曜日に再配達をお願いしようと思うが、電話受け付けの時間は20時までだった。まあいいか、と無視していると、翌日も帰宅したら不在票が入っていた。ネットで調べると、どうやら再配達の連絡をしていなくても勝手に再配達しに来るシステムなのだそうだ。そんなシステムだから現場が疲弊するのだろう。不在票を見ると、昨日も今日も朝10時ぐらいに届けに来ていたらしい。その時間は、平日はいつも会社にいる。だから明日以降来られても自分はいない。だが会社が終わって帰宅するのはいつも21時以降なので、これでは原理的に再配達の電話をすることは不可能だ(まあ、会社の休み時間に電話すればいいだけなのだが)。なんというか、もう、不毛だなと思った。配達員が可哀想過ぎる。もちろん自分の荷物を届けるためだけにこのエリアに来ているわけではないのだろうけど、それにしても、毎日同じ荷物をもってきて不在票を入れるという仕事は、どのような気持ちにさせるのだろう。配達員も「絶対平日のこの時間仕事でいないだろここの住人」と思っているはずだ。……ということを考えつつようやく荷物を受け取った。

それからしばらく、Kindle Paperwhite中島らもの『今夜、すべてのバーで』を読み進めていた。部屋が南東向きで、午前中は日差しが入ってくる。ひだまりに脚をかざし、ぽかぽかしながら読んでいた。思えばこんなゆったりした時間は引っ越して以来はじめてな気がする。太陽って暖かいな。暖房の暖かさとはまったく違う。身体の中心から暖めてくれる。太陽に当たっていないと鬱になるとか、鬱になった人は治療の一環として太陽に当たるようにするとか聞いたことがあるが、たしかに太陽光には気分を高揚させるような一定の効果があると思った。太陽に当たると元気が出るなんてことは活動的なひとであれば当たり前の知見なのかもしれないが、我々のようなインドアな人間からすると、太陽の光がなんですか? という態度をとってしまいがちなのだ。けれどもなかなか太陽光の力は侮れない。午前中に日差しを浴びながらする読書のなんと気持ちのよいことか! プライムタイム。これは毎週の習慣にしよう。

おにやんまで遅い朝食を食べ、五反田を散策した。ツタヤでカードを更新し、はじめてここでDVDを借りた。5枚で1000円。月額1000円で借り放題のサービスがあるので、絶対これに入ったほうがいいなと思った。来週加入しよう。晴天の目黒川を望みつつ家に戻る。五反田の目黒川は景色が良くてびっくりだ。ここも春になれば桜が綺麗なんだろうな。大崎方面には東部池上線の線路が上に掛かっていて、その向こうには両岸にタワマンの林立するすごいラグジュアリーな空間が構成されていて、夜にそっちの方にいくとおしゃれ感に圧倒される。五反田から徒歩3分ぐらいのところにこんなにおしゃれな場所があったのか! と、最初見たときは驚いたものだ。首都高方面にいくとタワマンというほどでもないがまあまあ高いマンションが立ち並んでいる。こちらは川沿いに飲食店が発達していて、「ミート矢澤」なんかはいつも行列ができている。頃合いを見計らっていつか行ってみたい。それからアイリッシュバーの「グラフトン」は引っ越したその日に友達と入ったのだが、落ち着いていてたいへんよい。日によっては混んでるのかもしれないが、少なくとも土曜の夜は落ち着いていた。日本のクラフトビールもいろいろ置いてあった。仕事帰りに寄りたい店。

で、家で『グリーンマイル』を見た。半分見たところで眠くなって寝た。昼間の昼寝って無数の要素が錯綜した変な夢を見がちだ。例によって変な夢をみた。夢の内容はもう覚えていないが、起きたら18時前で、結構寝てしまった、時間があっという間に過ぎてしまったという小さな衝撃を受けたことを覚えている。それで『グリーンマイル』の続きをみた。そういえば家で映画を見るのは3週間ぶりか。家で見る映画には外で見る映画とは違った良さがあるよね。リラックスできるとか、巻き戻しできるとか。そういう良さを再確認した。ゆったりとした時間だった。
そんな休日だった。