研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

『クワイエット・プレイス』は“ドント・ブリーズ 全国編”だ【ネタバレ感想】

音に反応して襲ってくるエイリアンによって地球は壊滅。荒廃した地球で残された人類は細々と暮らしていた……絶対に音を立てないようにして。

 

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4.0点

 


正直ナメてかかってました。途中から最後までずっと口を手で押さえながら観てた。すごーくハラハラした。


このエイリアンというのがデカいカマキリみたいなやつなんだが、思ったより機動力と殺傷力が高い。大きな音を立てると地響き鳴らしながらやってきてタックルしてくる。殺される時は一瞬である。あとどういう機構なのかわからんが喉を鳴らすような音を立てる。ジュラシックパークのラプトルの爪トントンみたいな規則的なノック音。これもこわい。『ドント・ブリーズ』で盲目の退役軍人が壁を触りながら高速で廊下を駆け抜けていくシーンがあったけどそんな感じ。それが家じゃなくて全宇宙に展開されたのが本作。


ツッコミどころはたくさんある。こんな単純な行動原理のエイリアンを人類は倒せなかったのか。なんでも音に反応するんなら北極とかに誘導させて檻に閉じ込めるとかできるのでは。あと最後、そんな簡単に自前の超音波発生器でエイリアン撃退できるっていうのになんでこれまで人類できなかったの、なんでこの家族、というかオヤジが発明できたの、こいつ博士とかでもないのに……とか。まーしかしツッコミどころがあるからダメ、という見方は素人でしょう。こういうツッコミどころをあれこれ指摘しつつ、じゃあどうするべきだったのかとかまで空想を巡らせる遊び心こそ大切にすべきです。


しかしツッコミどころとしてやや看過できない点が1つ。それはBGMです。さすがに音でビビらせすぎじゃね?  もちろんホラー映画にとって音でビビらすというのは大事です。大事ですが……しかしこの映画、「音を立てたら即死」なわけじゃないですか。どうぜん我々観客も音を立てまいとしてポップコーンを口にすることさえはばかられるわけですよ。にもかかわらず、あの重低音ゴリゴリの不気味サウンドがズゥーン!  ズゥーン!  と流れてるのはなんか、違くないですか?  と。


モンハンにフルフルっていう白くて眼がないモンスターがいる。モンスターと戦う時はいつもアガるBGMが流れる。ゲームというのは普通そういうもんです。でもフルフル戦だけはBGMが流れない。なぜならフルフルは、音に反応して攻撃する盲目のモンスターだからなんですね。そう、まさにこの映画と同じなんですよ。だから僕としては、カプコンがフルフル戦でBGMを流さなかったその意図を重く受け止めざるを得ないっすよね。フルフル戦においては、音がないという、それそのものが恐怖なんだと。逆に言えば、たとえ小さくても音が聞こえたらそれは死につながるんだと。そうした緊張感の演出としてあえて音を消してるんだと。


そんなツッコミどころを置いておけば、たいへんハラハラさせてくれるホラー映画でした。一番最後のエミリーブラントのニンマリという表情、最高じゃないですか? なんかこう、うっひょーって感じでした。つらいことばっかりだった彼女が報われてよかったなあと思うと同時に、こう、勝利の確信を共有した感があり。救われた感がありますよね。あと階段の釘はずっと怖くて子供たちが踏まないか不安でしょうがなかったので早く修理してください。

 

 

●関連する何か

同じくジョン・クラシンスキー監督。フィルマークスによれば「掘り出し物」「プチ名作」とのこと。こっちには彼の奥さんのエミリーブラントは出てない。が、アナ・ケンドリックが出てるということはそこそこいい映画な気がする(え)